ケーススタディ(更新: 2026/11/8)

NVIDIAの「Kumo Relational」をサイトの回遊データで試してみた|学習なしで来週読まれるページを予測

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執筆: AIOPulse編集部

ChatGPT・Gemini・Claude など AI 検索(AIO/GEO)対策の専門チーム。日々の言及シェアモニタリングデータと、業界別の AIO 対策ノウハウを発信しています。

NVIDIAが公開した「Kumo Relational」は、複数のテーブルがつながったデータ(リレーショナルデータ)から、学習なしで予測できる基盤モデルです。GIGAZINEでも「データベースに直接作用するリレーショナル基盤モデル」として紹介されました。

普通の機械学習では、テーブルを1つの表にまとめ、「直近7日の閲覧数」のような特徴量を人が作ってから学習させます。Kumo Relationalは、テーブルとそのつながりを渡すだけで予測できるとうたっています。

本当にそうなのか。AIOPulseのサイトのアクセスログ(回遊データ)で試してみました。AIO対策とは直接関係しませんが、データ活用の実験として、手順・結果・つまずいた点をそのまま残します。

Kumo Relationalとは

NVIDIAの公式ブログ(Hugging Face)によると、Kumo Relationalの特徴は次のとおりです。

  • 事前学習済み: 実データに似せた合成のリレーショナルデータで1回だけ学習してあり、新しい予測は「過去の例を手本として見せる」だけで行う(インコンテキスト学習)
  • テーブルのつながりをそのまま使う: 外部キーと時刻を保ったまま、関連する行をたどって予測する
  • 公開されている: 重みはHugging Face(nvidia/Kumo-Relational)、コードはGitHub(NVIDIA/structured-data-models)。コードはApache 2.0、重みはOpenMDW 1.1のライセンス
  • GPUで動く: PyTorchのライブラリとして提供される

モデルのファイルは分類用・回帰用とも約120MBで、家庭用のGPUでも扱える大きさです。

試したこと: 「来週、どのページが読まれるか」

使ったデータ

AIOPulseのサイトの閲覧ログのうち、ボットを除いた人の閲覧だけを使いました。期間は2026年8月19日〜11月8日(日本時間)で、約7,500閲覧・約5,700訪問者・約1,050ページです。訪問者は匿名のIDで、個人を特定できる情報は使っていません。データは社外のサービスに出さず、手元のGPU(GeForce RTX 3080)で処理しました。

これを3つのテーブルにしました。

  • ページ: ページの種類(トップ・ブログ・ランキング・無料診断など)、言語
  • 訪問者: 端末の種類(スマホ・PC)
  • 閲覧: どの訪問者が、どのページを、いつ見たか。流入元の種類(検索・SNS・AI・直接など)

なぜページの予測にしたか

最初は「訪問者が7日以内にまた来るか」を予測しようと考えました。ところが、直近4週の訪問者約2,200人のうち、翌週に再訪したのは7人(約0.3%)だけでした。正解の例が少なすぎるため、ページを単位にして「来週、そのページが1回でも読まれるか」と「何回読まれるか」を予測することにしました。どのページに需要が集まりそうかが分かれば、更新する記事の優先順位づけに使えます。

やり方

  • 毎週月曜を基準日とし、その前の4週に1回以上読まれたページを1つの例にしました
  • モデルに渡したのは、そのページの直近4週の閲覧の記録(何日前か・時刻・曜日・流入元・端末・その訪問者のそれまでの閲覧数)と、ページの種類だけです。「直近7日の閲覧数」のような集計値は渡していません
  • 予測したい週より前の週の例(4,105〜5,050件)を手本として見せ、基準日の週を予測させました。評価した基準日は10月19日・10月26日・11月2日の3つです
  • 比べる相手は3つです。「先週と同じ回数だけ読まれる」「直近4週の平均」、そして人が特徴量(直近7日・28日の閲覧数、訪問者数、最後に読まれてからの日数、ページの種類など)を作って学習させた勾配ブースティング(scikit-learnのHistGradientBoosting)です
  • Kumo Relationalは結果が少し揺れるため、各基準日で5回ずつ予測して平均を取りました

結果: 学習なしで、学習させたモデル並みかそれ以上

基準日指標Kumo Relational(学習なし)勾配ブースティング(特徴量を作って学習)先週と同じ直近4週の平均
10月19日来週読まれるか(AUROC)0.760.710.680.72
10月26日来週読まれるか(AUROC)0.700.650.630.69
11月2日来週読まれるか(AUROC)0.780.700.680.73
10月19日閲覧数の外れ幅(MAE)0.901.031.291.30
10月26日閲覧数の外れ幅(MAE)0.680.941.281.18
11月2日閲覧数の外れ幅(MAE)0.770.881.051.19
10月19日読まれる順位の当たり(順位相関)0.350.320.300.37
10月26日読まれる順位の当たり(順位相関)0.300.230.210.28
11月2日読まれる順位の当たり(順位相関)0.410.300.320.36

AUROCは0.5が当てずっぽう、1.0が完璧です。MAEは予測した閲覧数と実際の差の平均で、小さいほど良い値です。順位相関は、よく読まれる順に並べたときの当たり具合で、高いほど良い値です。Kumo Relationalの閲覧数の予測は幅(分布)で返ってくるため、外れ幅はその真ん中の値で、順位はその平均で見ました。

  • 「来週読まれるか」は、3つの基準日すべてでKumo Relationalが最も高く、3回の平均は0.75でした(勾配ブースティング0.69、直近4週の平均0.71)
  • 閲覧数の外れ幅も3回ともKumo Relationalが最も小さい値でした
  • 順位の当たりは、10月19日だけ直近4週の平均がわずかに上回りました
  • 5回のくり返しでのばらつきは、AUROCで最大±0.02ほどでした
  • 処理時間は、手本の読み込みを含めて1回の予測(分類と閲覧数の両方)が1秒前後、GPUのメモリは最大で約1.2GBでした

11月2日からの週に「よく読まれる」と予測した上位は、トップページ、AI検索チェックのLP、業界別ランキング、無料AIO診断のページでした。実際にもこれらはよく読まれた側のページです(1週間で8〜43回)。一方で、大きく読まれるページの閲覧数は少なめに予測する傾向がありました。

わかったこと

特徴量を作らなくても、それなりに当たる

今回いちばん印象に残ったのは、「直近7日の閲覧数」のような集計値を一切渡さずに、集計値で学習させたモデルと同等以上の結果が出たことです。普段は時間のかかる特徴量づくりを飛ばせるなら、データ分析の最初の当たりをつける道具として便利です。

ただし、小さなデータでの1回の試し

このサイトの閲覧は週に数百件で、評価した週も3つだけです。勾配ブースティングとの差もAUROCで0.05〜0.08ほどで、大差ではありません。もっと大きなデータや別の問いでも同じ結果になるとは限らないので、「この規模ではこうだった」という記録として読んでください。

動かすときにつまずいた点

  • 手軽な使い方はLinux向け: 公式のクライアント(予測クエリを「PREDICT COUNT(…) FOR EACH …」と1行で書く方式)は、テーブルを組み立てる部品(structured-data-models-relational-engine)が、2026年11月8日時点のPyPIではLinux向けしか配布されていませんでした。今回はWindowsのPCだったため、モデル本体のライブラリ(structured-data-models)に、例と関連テーブルを自分で組み立てて渡しました。LinuxかWSLの環境なら、公式の手順のほうが手早いはずです
  • PyTorchのCUDA版に注意: ライブラリを入れるとCPU版のPyTorchに置き換わることがあり、CUDA版を入れ直しました
  • 分類の結果は列名で取り出す: 「True」「False」の確率の列の並びが、呼び出すたびに入れ替わりました。位置で取ると、確率が逆になります
  • 結果が少し揺れる: 内部でランダムな並べ替えを使うため、同じデータでも結果が少し変わります。何回か予測して平均を取るのがおすすめです

AIO対策のデータにも使えそうか

AIOPulseが毎日集めているデータも、キーワード・AIへの質問・AIの回答・回答に出てきたブランドが互いにつながったリレーショナルデータです。今回の試しで、こうしたデータから特徴量づくりなしで当たりをつけられる見込みが見えました。次は「来週、どのブランドのAIでの言及が伸びそうか」を同じ方法で試してみたいと考えています。

(追記: 試した結果は「Kumo Relationalで、AIでのブランドの言及シェアの伸びを予測してみた」にまとめました。)

まとめ

  • NVIDIAのKumo Relationalを、AIOPulseのサイトの回遊データ(約7,500閲覧)で試しました
  • 学習も特徴量づくりもなしで、「来週どのページが読まれるか」を、特徴量を作って学習させた勾配ブースティングや単純な予測と同等以上の精度で予測できました
  • 家庭用のGPU(RTX 3080)で、1回の予測は1秒前後、GPUメモリは約1.2GBでした
  • 公式の手軽な使い方はLinux向けで、Windowsでは自分でテーブルを組み立てる必要がありました

参考: NVIDIA Kumo Relational(Hugging Face Blog)、NVIDIA/structured-data-models(GitHub)、GIGAZINE(2026年10月22日)

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